私家版翻訳を再開する際にも書きましたが、英国の歴史小説家ローズマリー・サトクリフの”Sun Horse, Moon Horse”を訳し始めたのは今から8年前。
途中、色々なことが重なって翻訳作業が滞り、感想メールを下さった方とも不通になってしまってからは、早く進めなくちゃと気持ちばかりが先走っていました。
このiZaブログに日々のひとりごとをエントリするようになって早2年近く経ちますが、つくづく実感するのは、ブログを使うと自分が書いた文章に直しを入れるのも、それを保存するのもとても簡単にできることです。
本当に有り難い機能!
それに気づいた私はこの6月、止ってしまっていた第7章の(2)からまた訳し始めました。
翻訳を進めるうちに、それまで訳し終わっていた箇所にも手直ししたい部分が出てきたりして、全体を見渡しながらの作業は素人の私にとっては相当やりがいのあるものになりました。(笑)
サトクリフならではの世界を再現する試みは、とても楽しいものでした。
かなり勝ち気で視野の狭い女の子として描かれているルブリンの妹テレリにサトクリフの女性観を改めて感じたり、ダラとの友情に訳しながらなんども涙を流したり・・・。
ところで、私が翻訳する上で強く意識したのは、サトクリフが描き出した物語にできるだけ忠実に訳すことでした。
例えば、芝地に浮き出た白亜の白馬の鷹もどきの頭は、実物は白く輪郭が彫られた芝地に白亜が円く削られた目をしていますが、サトクリフは白亜の頭部に円い芝地の目があるように描いています。
そして、その「大地と空とがつながる、不思議な強い力の込められた場所」である「芝地の目」から、そのか細い茎をのばしている’harebell’。
これを、灰島かりさんは『ケルトの白馬』のなかで、白くくぼんだ目(←実物の白馬の目と同じ)の周りの枯れた芝の中に生えるブルーベルと訳されていますが、ブルーベルは春に勢いのある青い花を鈴なりに咲かせる種類だそう。
初秋にその命を白馬に注がんとするルブリンはきっと、もうじきその先に薄い青色のベル状の小花が咲くだろうと思っていたはずなので、私は秋に咲く糸沙参(いとしゃじん)と訳しました。
そもそも、物語の白い牝馬は、東から西へと駆けているように描かれたことになっていますが、実際のアフィントンの白馬は北から南の方角へと向かっています。
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サトクリフはサトクリフに見えるように描いた、ということなのでしょう。
ルブリンがそうしたように。
そうそう、世界史では "Atrebates"=アトレバテスと表記されるケルトの一族について、私はアトリベイツと表記しました。
「レバテス」の部分がローマ側からみた響きに聞こえたことと、サトクリフがこの物語の中で "Attribates" と表記していることから、そのようにしてみました。
実際にサトクリフがどのように発音したかはわかりませんが・・・。
また機会を作って、サトクリフのお話を私家版翻訳してみたいと思っている懲りない私です。(笑)
私家版サトクリフ『太陽の馬 月の馬』はこちらからどうぞ♪